図1のように卵管は排卵してくる卵子をピックアップする(卵管采)、卵子と精子が出会って受精する(卵管膨大部)、受精卵が卵管の中を運ばれて(卵管上皮絨毛細胞)子宮内膜に到達するなどといった、いくつもの重要な働きがあります。
そしてそれらの重要な働きを妨げるいくつかの疾患があり、そのために妊娠が阻害されることもあるわけです。よって卵管の機能に異常がないか詳しく調べることは重要ですし、そしてそれを治療することも重要です。
ところがおなかの中にある臓器ですのでその観察や治療は、腹腔鏡若しくは開腹手術をして、となります。
腹腔鏡とは骨盤内の臓器を直接見るための直径3mm、長さ20cmほどの望遠鏡のような医療機器です。
腹腔鏡検査とは、へその下を少し切って、そこから腹腔鏡を入れて腹腔内を観察します。切開は2mmぐらいで非常に小さく、術後にはほとんどわからなくなります。診断目的の腹腔鏡は通常30分で終わります。腹腔鏡下手術を行う場合には、1時間かかることもあります。この検査で、子宮や卵巣などの骨盤内臓器の状態が確認でき、子宮内膜症や卵管周囲の癒着などの不妊原因がわかることがあります。
それでは腹腔鏡検査の重要性を説明してみたいと思います。
WHO(世界保健機関)の不妊症の7273カップルの調査によると、不妊症の原因は女性のみが41%、男女ともにありが24%、男性のみが24%、原因不明は11%です。1)
女性側の主な原因には、卵巣機能異常、卵管異常、子宮異常などがありますが、それら複数の原因が重なっている場合もあります。よって不妊症は様々な原因をさぐり治療すべき疾患です。
女性側の不妊症の原因の中で、卵管因子は女性全体の31.2%を占めています。2)
卵管の検査は子宮卵管造影(HSG)、通水、通気などが行われます。ここでHSGの検査で卵管のすべてがわかるのでしょうか。HSGと腹腔鏡検査の診断が異なる場合もあります。3)また、腹腔鏡検査は原因不明不妊症の原因検査にも有用であるという報告もあります。4)なかなか妊娠しないのであれば(治療を始めて半年以内くらい)腹腔鏡で確かめた方が良いでしょう。
セント・ルカ産婦人科
院長 宇津宮 隆史